いよいよメルカリがリテールメディアに本格参入
- 野口 航
- 2月7日
- 読了時間: 4分
更新日:2月27日
日本のリテールメディアにおける眠れる獅子が、ついに目を覚ました。日本のフリーマーケットアプリのデファクトであるメルカリが、リテールメディアへの本格参入を発表した。メルカリ内で広告が掲載されているの発見したという情報や広告事業のための人材を募集しているといった噂は既に公知のものとなっていたが、ついに「メルカリAds」としてお目見えした。

メルカリ、「メルカリ」内での広告事業「メルカリAds」を本格開始 https://about.mercari.com/press/news/articles/20250206_ads/
まず注意したいのは、今回発表された「オフサイト広告」「オンサイト広告」というワードは一般的なリテールメディア用語とは使われ方が違う点だ。一般的には「オフサイト広告」はリテールメディア提供企業のオウンドメディア外、つまりYouTube等での広告配信を指す言葉として使われる。今回発表されたメルカリAdsを一般的な定義で言えば、いずれも「オンサイト広告」に該当する。定義が混乱しがちな黎明期においては特に注意したい。では、一般的な区分に分解して3つのメニューを見ていこう。
メルカリ内"業者"のための検索連動型広告
こちらの記事で紹介したとおり、リテールメディアの中心はECアプリ(サイト)であり、さらにその中心は検索キーワードに連動させた広告だ。メルカリAdsの検索連動型広告の広告主は「メルカリShops」でなければならない。筆者はメルカリShopsについて多くの知見を持たないが、おそらくは中古品販売業者と個人の中間に位置する、いわゆる"せどり"のユーザーも多いだろう。Amazon内のセラーのためのスポンサープロダクト広告や楽天の店子のための楽天RPPの広告主は実店舗も伴う法人が多いと思われるが、個人事業主も利用可能なメルカリShopsは層が低めと想定される。
中古品ネット販売や"せどり"は一般的なECモール出店ビジネスよりも利益率はかなり低いことが想定され、広告費というコストをかけて表示をブーストさせることで販売数量を増やし、総利益を増やすループにまで入ることができるのかは未知数だ。ハマる業種は特定の商品カテゴリに偏る可能性はある。
メルカリ内でのダイナミッククリエイティブ広告配信「Product Ads」
メルカリの商品に溶け込むようなクリエイティブで、タップすると外部ECサイトに誘導できるのが「Product Ads」だ。フィードで入稿するいわゆるダイナミッククリエイティブ広告(動的広告)である。広告出稿にあたってはメルカリには出品していなくとも構わないので、一般的なECサイトが広告主のターゲットとなろう。
メルカリの商品は出品時にJANコードなどの商品識別子の情報を持っていないと思われるため、どのようなターゲティングが行われるのかは気になるポイントだ。表示している商品&カテゴリと広告商品とのマッチングなのか、閲覧しているユーザーにマッチする広告商品を表示するのかは、広告パフォーマンスなどにおいて大きな違いを生む。フリマアプリという特性上、商品情報が正しく登録されてはいないため、Amazonなどと比べるとマッチングは難しそうである。
メルカリ内での一般的広告配信「Infeed Ads」
"普通"のネット広告に最も近いメニューが「Infeed Ads」だ。メルカリ内でタップすると外部ECサイトに誘導できるため、こちらもメルカリに出品していなくとも出稿できる。Infeed Adsは、どういったターゲティングが可能なのかに注目だ。キーワード連動型広告ができるならば、リスティング広告市場が新たに誕生したとも言える。今後は、受験が終わって赤本を売りに出しているユーザーに対して引っ越し屋の広告を出す、といったライフイベント推定によるターゲティングも可能になるのかもしれない(そう、今は2月だ)。
メルカリはAmazonや楽天と比べ、出店者側が自社商品を目立たせたいという欲求が強くないのが弱みとなるだろうが、求めている商品のキーワードが入力されるという強いデータを有している。しかも、それはGoogleのWeb検索窓ではなく、メルカリアプリの中でだけ検索される希少なキーワードなのだ。メルカリAdsの今後の展開に注目したい。
関連ページ
メルカリAds(メディアガイド)