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世界最大のホテルチェーン・マリオットがコマースメディアを本格展開

世界最大のホテルチェーンであるマリオットが「MARRIOTT MEDIA」を発表し、コマースメディアの展開を本格化させる。ホテル業界の巨人が先陣を切って進める取り組みは、業界全体に大きな影響を与えそうだ。


巨人マリオットと世界中の人々を突き動かすBonvoyポイント

マリオットは、日本でよく知られるもので言えばリッツ・カールトンのようなラグジュアリーホテルブランドから、道の駅に次々と設置されている低価格帯のフェアフィールド、ビジネスホテルのフォーポイントといったブランドまで、上から下まで幅広いラインナップのホテルを展開している。2010年代に他社ホテルチェーンを次々と買収し、他のチェーンと比べて頭一つも二つも抜けた存在となっている。会員数は世界で2億3,000万人に及ぶという。その要となるのが「Marriott Bonvoy」(マリオット・ボンヴォイ)と呼ばれるポイントプログラムや宿泊予約などを行えるアプリやウェブサイトだ。


ホテル予約はOTAよりも公式アプリ

日本人が旅行に行こうと思い立った場合、一般的には楽天トラベルや一休のようなOTA(Online Travel Agent)を利用することを想起するだろう。Marriott Bonvoyの場合、時期や為替にも大きく左右されるがOTAよりも安いポイント価値で予約できるケースが多い。かつスタンプラリーのように宿泊を重ねると会員ランクがアップして、滞在時には部屋のグレードアップなどの優遇を受けられる。だからこそマリオットユーザーたちは世界中のマリオットホテルを渡り鳥のように旅するのだ。さらに、提携クレジットカードを使った日常の買い物でもBonvoyポイントがザクザク貯まる仕組みを構築している。これは日本で楽天やドコモがポイント経済圏を回しているのに近い構造だ。

公式サイトのプレスリリースより。「RIOTT MEDIA」だけ太字になっているのは間違いではなさそうだ。OTTと掛けているのだろうか?
公式サイトのプレスリリースより。「RIOTT MEDIA」だけ太字になっているのは間違いではなさそうだ。OTTと掛けているのだろうか?

富裕層を含むファーストパーティーデータをフルファネルで活用

マリオットは客室内テレビ、アプリ、メールといった多様なタッチポイントを持つ。さらに電話番号やメールアドレスも保有しているため、自社メディア以外のオフサイト広告配信も可能だ。広告配信後にはカスタマーマッチ等によってクローズドループ測定も実現できるはずだ。


宿泊する施設がラグジュアリー傾向か否かは可処分所得を如実に表す指標であり、富裕層向け広告主にとっては最高のターゲティング機会となろう。消費額と密接には結びつかない年収や資産額とは異なり、購買意欲の旺盛な富裕層という最強のファーストパーティーデータを保有していると言える。たとえばラグジュアリーホテル利用者であれば宝飾品、アパレル、航空会社、自動車、時計、美容、カード会社といった広告主が想定される。一方でビジネスホテルであればBtoB広告も効果的かもしれない。ただ、へとへとになって辿り着いたホテルのベッドで、パニックに陥ったオフィスで誰かが叫んでいるタクシー広告のようなCMを観させられるのは御免被りたいが。


3年間のPoCを経て正式ローンチ

マリオットは2022年に「Marriott Media Network」を北米でローンチしていた。これは米Yahoo!との協業によるもので、PoCに近い取り組みだった。3年を経た今、「MARRIOTT MEDIA」として自社主導で本格ローンチに至ったのは、成功への手応えをつかんだからだろう。


ホテルのコマースメディアは当たり前に?そして日本は?

グローバルブランドではヒルトン、IHG(インターコンチネンタル)、ハイアットなども追随するかどうかが注目される。マリオットは早くから大規模なIT投資を行ってホテル管理やBonvoyを成功させ、その次のターゲットとしてコマースメディアに力を入れているように伺える。


一方で日本のホテル業界の状況はどうだろう。日本ではOTAのITシステムは先進的と言えるが、個々のホテルチェーンの予約アプリはお世辞にも使いやすいとは言い難く、戦略的で大胆なポイント設計も行われていない。その上、インバウンドブームもあって国内ホテルは外資ブランドに次々と看板を付け替えている。外資に集客やマネジメントを委ねた結果、コマースメディア収益の大半も奪われることになってしまうのだろうか。いずれ温泉旅館や民宿のテレビから、宿泊客ごとにパーソナライズされたCMが流れる世界になるのだろうか。それはそれで大変興味深い。


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