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本気を出したGoogleのAIは人類の購買行動に変革をもたらすのか

更新日:12 時間前

Googleは5月20日に開発者向けイベント「Google I/O」、翌21日にはマーケティング関連イベント「Google Marketing Live 2025」を開催した。連日のイベントでGoogleはAIへの本気度を増している姿をまざまざと見せつけ、人類の行動やリテールメディアビジネスを変えてしまう可能性を感じさせるほどであった。


Googleは検索エンジンからAIへ

なかでも驚きだったのは「AI Mode」の全面導入だ。誤解を恐れずに言えば、Googleの検索を「AI Mode」に切り替えると "GoogleがChatGPTみたいになる" というものだ。Googleの検索結果画面で「AIによる概要」 (AI Overview) がここ数ヶ月間で急速に出現率が高まり、それをユーザーは何年も前から使っていたかのように特段の意思もなく利用するようになったように、「AI Mode」もあっという間に浸透していくのだろう(現在は米国のみ)。5年後には、キーワードの羅列を入力していたあの頃を思い出して笑っているのかもしれない。


今回の発表は、「Google」は外部の情報源サイトにたどり着くための索引としての検索エンジンでなく、「Google」の中で答えを見つけて完結するAIになると宣言したと捉えてよい。これはGoogleのビジネスの屋台骨である検索広告の売上を一時的にであれ減少させる可能性を多分に持ったものであり、イノベーションのジレンマを断ち切ろうとする勇気ある決断だと言える。人々がキーワードでググる行為を減少させることになるだろうし、Google広告はキーワードを運用するという世界でもなくなるだろう。Googleという圧倒的に優位な立場であれば、劣化版であるキーワード検索をユーザーが使う習慣を延命させることはできただろうが、OpenAIをはじめとする相対的に弱い敵を相手に、かなり早い段階で潰しにかかった形だ。



Googleが人々の購買行動を変える?

リテールメディアに関するトピックで言えば、ECのありかたそのものも変わってくる可能性がある。注目すべきは今回発表された「Ads in AI Mode」や「Ads in AI Overviews」だ。詳細は未発表だが、Google AIによる回答に広告を差し込むことができるものと考えて大筋間違いないだろう。おそらく、質問へのGoogle AIの回答に混じって外部ECサイト上の商品が広告とわかる形でリスティング(列記)されるのだろう。材料としてはGoogle Merchant Centerの商品マスタデータが参照されると思われ、データ整備と在庫や価格のリアルタイム反映の重要性がさらに増すだろう。


その他にも、あたかも自分が試着しているかのようなAI合成画像を生成したり、価格が妥当レベルに落ち着いたら自動的にAIが買い付けるなどのAIエージェントも搭載されるデモも示された。ここまで来ると、自社ECサイトやモールを超える機能だ。


なお、AI開発における競合であるOpenAI社のChatGPTは先日ショッピング機能をリリースしている。AIと話しながら商品をスペック等で選ぶ体験は斬新だ。さらに今週、Microsoftも歴史あるディスプレイ広告システムであるDSP事業を閉鎖し、エージェント広告に注力すると宣言した。ネット広告の趨勢は、バナーで埋め尽くされたウェブサイトというディストピアが終焉し、AIの回答文や音声にしれっと差し込まれるような広告が中心となって行くことだろう。


Google AIがECモールをも駆逐する?

ユーザーが何らかの商品を探す場合、楽天やAmazonなどのECモールが役に立つ。ECモールを利用する理由としては、豊富な品揃えの中からの検索、最安価格の発見、ポイント、配送先が事前登録済みといったところだろう。Google AIやChatGPTは、インターネット上の多くのECサイトの商品情報からスペック・価格・口コミなどの情報からいくつかの商品をピックアップするため、ECモールの担ってきた役割を一部担うことができる(もちろんECモールの重要な機能は倉庫や配送機能であるため、役割の一部だ。)果たしてモールの中で自社商品を目立たせるオンサイトのリテールメディアは、AIによって価値を奪われるのだろうか。そして、SEOやリテールメディアではなく、AIの中で直接自社ECサイトの商品を露出させるAIO / LLMO / GEOが勢いづくのだろうか。いずれにせよ、自社ECでの商品マスタ整備をしておくことは日本でのAI Mode開始前にできる対策としては有効そうだ。


商品を探すという行為においてユーザーがECモールではなくAIをまず使うようになれば、ECモール上での広告であるオンサイト・リテールメディアとしてはメディア価値が下がってしまう。「ググる」という言葉がサイトを探索することを示す言葉から、商品を探すことを示すように変化するかどうか。未来はまだわからない。



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