ZETA検索エンジンがQVCとパナソニックに導入—EC界のGoogleになるか
- AI要約
- 3月26日
- 読了時間: 4分

ZETA株式会社のEC向け検索エンジン「ZETA SEARCH」が、QVCジャパンとパナソニックの公式サイトに相次いで導入された。異業種の大手企業がこぞって採用する背景には、検索機能の高度化だけではない戦略的思惑が透けて見える。Googleが検索連動型広告で覇権を握った歴史をなぞるかのような動きに、日本型リテールメディアの地殻変動を予感させる。


大手企業だが検索はコアではないECサイト
テレビショッピングや通販として知られるQVCが運営するECサイト「QVC.jp」に「ZETA SEARCH」が導入された。ショッピングナビゲーター名での検索機能が追加されることで、テレビ番組とECサイトのシームレスな連携が実現されるとのことだ。一方でパナソニックの家電商品サイトにも「ZETA SEARCH」が導入された。単なる公式通販の商品検索機能だけでなく、公式の商品情報や説明書などをタブで切り分けて検索できるようにした点は一般的なECサイトと異なる点だろう。
いずれも日本国民によく知られた企業ではあるが、ECサイトの検索機能自体は国民的なサービスでもコアでもない。ECサイト提供企業が個々に開発するよりも、汎用的に組み込める「ZETA SEARCH」が有益と判断された結果であろう。
検索連動型広告への布石—Googleモデルを踏襲か
興味深いのは、ZETAが「EC検索エンジンの提供」に留まらない野望を抱いているであろう点だ。同社はすでにリテールメディア広告エンジン「ZETA AD」をリリースしている。これはGoogleが検索エンジンを足がかりに広告ビジネスの覇者にのし上がった歴史を彷彿とさせる。
かつて米Yahoo!はポータルサイトとして国民的に利用されてきたが、検索エンジンのビジネス的な重要性を理解しておらず、当時は新興企業であったGoogleに検索エンジン部を外注した。その後、GoTo.com(後のOverture社)の発明した検索連動型広告をGoogleが拝借し、莫大な利益を生み出すようになっていく。米Yahoo!が検索エンジンと広告の連動の重要性に気づいた頃には時すでに遅し。Googleは検索エンジン提供と広告システム提供を不可分のものとすることで、すべてを手中に収めることになった。
さて、現代のリテールメディアに話を戻そう。リテールメディアがバズワード化した今も、実態の売上の大半は検索連動型広告によるものだろう。しかし、Amazonや楽天市場のような超巨大モール以外のECサイトが検索連動型のリテールメディアを販売することは、実は非常に難易度が高い。たとえば100個のECサイトがそれぞれ100個のリテールメディア広告管理画面を提供していたら、広告主は100倍の運用の手間がかかってしまい、運用工数にリターンが見合わない。そのため、広告出稿は多くても10プラットフォーム程度に絞り込まれる。しかも、モール型ECであれば出店者(セラー)が太い広告主になりうるが、モール型ではないECサイトは広告主の獲得も容易ではない。ZETAが検索エンジン導入を足がかりにリテールメディアの検索連動型広告ネットワーク(言い換えるとリテールメディアネットワーク; RMN)をトロイの木馬のように本格始動させることは想像に難くない。
ZETAのしたたかな戦略
そう感じさせるには理由がある。ZETA社はかつてゼロスタートという社名で運営されていたが、ダイナミック広告やレコメンドエンジンを手掛けていた上場企業であるサイジニア社に形式上は買収された。その後、親会社たるサイジニア社の祖業の多くを終了させ、旧ゼロスタート社のEC支援系の事業を成長に導き、業績も株価も見事に回復させてきた歴史がある。他種の鳥の巣に自らの卵を産み付け、生まれた雛は宿主の雛を巣から押し出し、宿主に子育てをさせるカッコウを彷彿とさせる、したたかさが良い意味で滲み出る企業なのだ。日本のECという場所で、ZETAがGoogleの辿った道を再現するのか—その戦略に注目が集まる。