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米国リテールメディア市場の伸びが止まらない

執筆者の写真: 野口 航野口 航

更新日:2月28日

米国リテールメディア市場の成長には陰りが見えないことが、最新の調査からも裏付けられた。

Retail Media Forecast Report Update Diversification Drives a New Phase of Growth https://www.emarketer.com/content/retail-media-forecast-report-update (Note部の邦訳)ウェブサイトもしくはアプリ上に表示されるネット広告は、主に小売ECに関するものもしくはリテールメディアネットワークもしくはDSPから主に買い付けられるもの。ウェブサイトもしくはアプリの例はAmazon、ウォルマート、eBayを含む小売ECに主に関係するものを含む。リテールメディアネットワークの例はAmazonのDSPやEtsyのオフサイト広告を含む。リテールメディアネットワーク経由で購入される広告はECサイトもしくはアプリ上では表示されない可能性がある。

2024年から4年で89%伸び、ネット広告の21%を占めるようになる

今回米国のリテールメディア市場規模データを発表したeMarketerは、米国にある信頼度の高いリサーチ機関およびリサーチポータルだ。米国のリテールメディア市場規模調査は、確認できる限りでは2021年調査から毎年発表されている。(2023年版2022年版2021年版


今回発表された2025年版では、2024年から2028年にかけて米国のリテールメディア広告費はさらに88.5%伸びるとしている。ざっくりいえば、市場規模は2倍になるという見立てだ。規模としては2024年時点で$51.94B、日本円換算では8兆円規模の市場にすでになっている。赤いグラフは対前年比での成長率を示しており、2024年の20.4%から2028年には13.9%に鈍化するとの見通しだ。年々成長率は鈍化するものの、まだまだ強い伸び自体は続くとのことだ。米国においてはリテールメディアはすでに検索連動型広告とソーシャルメディア広告に次ぐ第三の存在になっており、高い成長率を維持し続けるのは難しい。ただし、鈍化するとはいえ年間で14%伸びる市場はそうそう無いのも事実だ。


日米でトレンドは同じだが、日本は店舗事業者によるリテールメディアが遅れてやってくる?

次に、米国と日本を比較してみたい。日本のリテールメディア市場規模については、以前の記事を参考にされたい。EC事業者に関しては日米で同様の成長率を辿るが、日本の店舗事業者によるリテールメディアに関しては2025年までの成長率は目を引く(下グラフ緑線)。EC事業者の成長率がやや寝てくるタイミングは日米でほぼ同時と見られている。やはりEC事業者はAmazonや楽天といった主要プレイヤーが既にリテールメディアに先行して取り組んでいるため、成長の伸びしろは大きくない。一方で日本の店舗事業者によるリテールメディアは米国とは大きく時間差があり、まだまだ伸びしろが大きいということだろう。なお、米国eMarketerデータにはウォルマートなどの店舗事業者による数字も含まれており、EC事業者と店舗事業者という単位では分解されていない。

日本のリテールメディア市場規模予想(出典)CARTA Holdings / デジタルインファクト
日本のリテールメディア市場規模予想(出典)CARTA Holdings / デジタルインファクト

リテールメディアはネット広告費の20%以上を占められるか

eMarketerのグラフにおける青い折れ線はネット広告費に占めるリテールメディア費の占有率を示している。2024年には16.8%を占めているが、2028年には21.3%にまで伸びて、ネット広告費の1/5を占めるようになるとの予測だ。


日本におけるリテールメディアの市場占有率も調べてみよう。以下は電通による「日本の広告費」ベースの数字と、先日発表されたCARTA HOLDINGS/デジタルインファクトによる調査データを独自に年度で並べたものだ。

電通「日本の広告費」の2024年データは間もなく発表されると思うが、現時点で最新の2023年データを見ていく。ネット広告全体で3.3兆円のうち、2,101億円が「物販系ECプラットフォーム広告費」であり、約8%を占めるとされている。電通の発表によると、

※「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」とは、生活家電・雑貨、書籍、衣類、事務用品などの物品販売を行うEC(電子商取引)プラットフォーム(これを「物販系ECプラットフォーム」と呼ぶ)上において、当該プラットフォームへ“出店”を行っている事業者(これを「店舗あり事業者」と呼ぶ)が当該プラットフォーム内に投下した広告費と定義。より広い意味での「EC領域での販売促進を図るインターネット広告費」全体を指すわけではない。 https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/2023/media.html

とされており、主にAmazonや楽天市場に出店している店舗によるオンサイト広告と考えれば良いだろう。つまり、2023年時点でネット広告の8%はリテールメディアのオンサイト広告が占めていたということだ。


一方でCARTA HD/デジタルインファクトによる2023年のリテールメディア市場規模データは3,761億円とされているので、電通調べの3.3兆円を分母とすればリテールメディアはネット広告の11%を占めていることになる。米国が占有率20%と考えると、日本はまだまだ道半ばといったところだろう。


2024年のリテールメディア市場規模は米国の8兆円に対して日本は0.5兆円。令和になっても実店舗での購買率の高い日本ではどのような進化を遂げるのか。日本型リテールメディアはどこまで成長できるのか、今後が期待される。

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