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unerryとDearOneがリテールメディア事業などで資本業務提携

野口 航

Beacon関連を中心に事業を展開するunerry(ウネリー)社と、ドコモ傘下でアプリ開発を行うDearOne社(旧ロケーションバリュー社)が資本業務提携を行った。リテールメディアネットワーク領域でも協業するという。

unerryとDearOneの資本業務提携について リテール業界・まちづくり領域向けスマホアプリソリューションと リテールメディア事業を、戦略的シナジーにより拡大 https://www.unerry.co.jp/news/unerry-dearone/

Beaconシステム連携とリテールメディア販売連携


この資本業務提携においては二つの協業が発表されている。一つ目は、unerry社の「Beacon Bank SDK」をDearOne社の「ModuleApps2.0」の標準メニューとしてシステム連携するというもの。二つ目は、unerry社が展開しているリテールメディア構築事業とDearOne社が提供するリテールメディアネットワーク「ARUTANA」の相互販売だ。業務提携と同時にunerryからDearOneに出資されたものと思われるが、金額は開示されていないため不明だ。


店舗向けアプリ開発を行えるDearOne「ModuleApps2.0」


DearOneの「ModuleApps2.0」は、店舗がアプリをパーツを組み合わせて開発できるサービスだ。店舗向けの簡易アプリ開発というとテレビCMも積極展開していたYappliが想起されるかも知れないが、Yappliのようなノーコードよりも、DearOne社は開発支援の側面が強いように伺える。"セミオーダー"の店舗アプリ開発といったところだろうか。


2025年現在、物理的なカードの会員証を新規発行するブランドはごく稀だろう。ほとんどのブランドはアプリかブラウザで会員証機能を提供するようになっているわけだが、各ブランドが白いキャンバスに一からアプリを開発していては効率が悪いため、ノーコードやモジュール化された形でアプリを開発できるようにしたサービスが多数存在している。店舗がアプリを提供する目的は会員管理としてのCRM、ポイントサービス、決済、プッシュ通知などであり、その多くを簡易に実装できる。


そもそもBeaconとは


unerry社はBeacon領域を専業とする世界でも稀有な上場企業だ。そもそもBeaconとは何かを知らない方も多いであろう。端的に言えば、BeaconはBluetoothの一種の電波を常に発信しているものであり、Appleは「iBeacon」という名称で呼んでいる。その電波をスマホが受信したタイミングでスマホに何らかのアクションをさせることができるという、原理的には非常に単純なものだ。たとえばコンビニであればコーヒーマシンにBeacon電波を発信する端末が埋め込まれていたり、ビルの自動ドアにも埋め込まれていて通過を検知できたりする。ただしiOSやAndroid OSがBeacon機能として提供しているのは、きっかけを端末に教えるだけの本当に基礎的な仕組みだけだ。ある日、あなたとスマホが入れ替わって、あなたがスマホになってしまったと想像して欲しい。街中を歩いていると、突然「どこにあるかはわからないけど、とあるBeaconに近いよ」とだけささやき声が聞こえる。それを受けてあなた(スマホ)がどう行動するかは、アプリ開発者が個別にプログラミングしなければならない。


ModuleApps2.0は簡易にアプリを開発できるものであったが、今回のunerryとの連携によって来店をきっかけとしたプッシュ通知を送ったり、マーケティング施策による来店の計測などもある程度簡易に実装できるようになるのだろう。Beaconの設定はエンジニアを必要とする大変に骨の折れる作業だが、マーケティング担当者が管理画面から特定店舗での来店プッシュ通知設定ができるような世界が実現すれば革命的だ。


リテールメディアネットワークでの協業は


今回のプレスリリースにおいては、DearOneの提供するリテールメディアネットワーク「ARUTANA」でのシステム連携と営業連携についても触れられている。ARUTANAは2023年11月にリリースされており、DearOneの手掛けるリテール企業アプリ上に横断的に広告を掲載できるアドネットワークのようだ。小売アプリは基本的に店舗内で起動され、会員バーコードやクーポンの提示という明確な目的を終えると閉じられてしまうため、基本的には広告への接触態度は良いとは言えない。しかし、まさに今小売店にいるユーザーだけに対して配架されている商品のメーカーが広告を配信できるようなれば、その広告価値は格段に引き上がることだろう。


この資本業務提携は、店舗アプリにBeaconによる来店トリガを簡易に実装できる、意欲的な取り組みだ。ユビキタスなBeacon環境をベースに、日本のリテールメディアが世界でも類を見ないような進化を遂げていくことを期待したい。

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